客先常駐という働き方について

客先常駐はIT業界のスタイル

ご存知の方も多いと思うが、IT業界では客先で仕事をすることが一般的である。

契約には主に以下3つの形態がある。

  1. 派遣契約
  2. プロセス型構内請負
  3. 成果型構内請負

 それぞれ簡単に説明すると、1の派遣契約とは、ごく一般に耳にする派遣で、契約先企業の一員となって契約期間職務に従事する働き方である。ポイントとしては、指揮命令権が相手にあるということである。つまり、形としては客先の社員のように使える/使われるということを意味している。つい最近までは、一般派遣と特定派遣で分かれていたが、法改正後統一化されている。

2のプロセス型請負とは、構内請負のうち、請け負った作業のプロセスに対して対価が支払われる契約である。ここでは、成果物に対する責任は負わなくてよい。また、1と違って指揮命令権は契約相手にはない。

3の成果型請負では、指揮命令権がこちら側にあるという点でプロセス型似ているが、成果物に対して対価が支払われる点で異なる。すなわち、契約上の成果物に対して責任を負うということである。

客先常駐では、帰属意識が生まれない。

客先の作業場を転々とする働き方にはそれなりのメリットがあるものの、デメリットのほうを多く耳にするという実態がある。

デメリットや不満点はいくつもあるが、その中で私が考える一番のものは、自分が正社員として雇用契約(無期雇用)している会社に対して帰属意識が生まれないということである。

それが生まれない理由は、働き方を考えれば明らかで

  1. 指揮命令権が相手にある。もしくは相手が実質握っている
  2. 作業場が他の会社
  3. 同僚や上司が他の会社の人間

すべてが上記のようであるとは言えないが、自分の体験や他のエンジニアの経験からそのような傾向があることは確かだ。

このような労働実態では、自己に対して労働者としてのアイデンティティが生まれにくなる。それは、正社員として契約して働いているのにもかかわらず、自分の会社がそこに関わっていないからである。

それでは、契約相手先企業に対して帰属意識が生まれるかというとそんなことは決してない。相手はそこの線引きをはっきりしてくるからだ。

このようなどっちつかずの宙ぶらりん状態が現在のIT業界の客先常駐、また以前の言葉を使えば特定派遣なるものなのである。一部の会社では、定期的に社内イベントを行って社員同士の交流を図っていたりしているそうだ。それ自体は決して悪いことではないと思うが、自分としては会社はサークル活動などとは違うのだから、そのようなものでは労働者としての確固たる自己は生まれないと思う。(何らかの帰属意識は生まれるかもしれないけれども)

もちろん、労働者としてのアイデンティティを保つためには、どこかの組織にはっきりと属していないといけないかというとそんなことはない。フリーランスのような働き方では、自分の力で自分の生計を立てるという確固たる決意があり、仮に客先常駐だとしてもそこに労働者としての自分を確立できる。

しかし、上記列挙したIT業界の働き方では、会社組織に属しているのも関わらずそこに帰属意識を持つことができない。それが労働者としてのアイデンティティを保てない主な原因だ。

これが私の考える最大のデメリットである。

 

今日はこのへんで。