マイケル・ポランニー著 『暗黙知の次元』 を読んで

暗黙知」とは何か

本書では、冒頭で

 

私たちは言葉にできるより多くのことを知ることができる 。

 

 と導入した後、暗黙知の具体的な構造について言及していく。

 暗黙知とは、要素(=部分)とそれらを包含するもの(=全体)があるとき、その2者が相互に影響を及ぼしあっている関係のことをいう。このとき、その「全体」は、包含されている「部分」を組み合わせただけでは説明できない存在となっている。また、全体を認識したうえで初めて知覚されるもしくは知覚しなおされる諸要素およびそれらの関係というものがある。

例を挙げよう。

男女の恋愛感情はまさしく暗黙知である。相手のことが「好き」という感情(=全体)がまず初めに自覚される。その後に、その感情を説明するものとして、たとえば顔がかっこいいとか性格が優しいとかの要素をもちだす。しかし、そういった相手の容姿や性格は「好き」を構成している部分に過ぎず、それらだけでは「好きという感情」のすべてを説明することはできないのである。

 暗黙知を働かせるためにも、楽しいことや好きなことをやる

  人間という生物に備わった最大の能力は、間違いなくこの「暗黙的統合能力」である。よく言われるクリエイティビティというものこの種の統合能力である。この暗黙的な統合能力が働くためには、自分を取り巻いている対象に対する興味や関心が絶対に必要である。本書の言葉を借りれば、「志向性」だとか「掛かり合い」といったものである。

 これからのAI時代においては、明示的なものはほぼすべて人工知能に置き換わると思う。明示できないものですら、多少の汎化能力はすでに達成している。AIに負けないようにするためには、いかに暗黙的統合能力を発揮していくかが鍵になる。そのためも自分が関心があることを片っ端からとことんやっていくことが不可欠なのだ。